リオネット2開発者インタビュー 第一部 ~リオネット史上最高の聞こえ~
リオネット2シリーズの革新
~パナソニックとの共同開発~
これまで約80年日本人の聞こえに向き合ってきたリオネットの補聴技術と、
パナソニック株式会社の洗練されたデザインや通信技術が融合。 日本メーカー同士でタッグを組み、
それぞれが持てる力を結集した先進補聴器が誕生しました。
リオネットが長きにわたり研究を重ねてきたディープニューラルネットワーク(AI技術、以下DNN※1)を搭載し、
聞こえの向上を果たすだけではなく、今後普及が見込まれるLEAudio※2にもバージョンアップでの対応を予定。
再生周波数帯域は12,000Hzまで出力可能とし、クリアな聞こえを実現しました。
前モデル“リオネットシリーズ”から飛躍的に性能を向上させたリオネット2シリーズ。
AIテクノロジーをはじめとする様々な先端技術と品質の向上を両立させ、小型かつ洗練されたデザインを実現した背景には、リオン株式会社開発部の苦悩と、その壁を乗り越えるための惜しみない努力や発想の転換がありました。
今回は開発部を代表する6名に、リオネット2シリーズに込めた思いを2部に分けて語っていただきます。
目指したのは暮らしに溶け込む補聴器
皆さんどのような想いで新製品開発に挑んだのでしょうか?
大澤
充電式にしたことはもちろん、これから話にでますがやはりメインとなるのはAINR(AIを活用した騒音抑制機能)とハウリングキャンセラーでしょう。
これらの機能は処理に大きな負荷がかかるため、前モデルリオネットシリーズから信号処理速度を4倍に高めた“リオネットエンジン2”を搭載しています。
これらが複合的に動作することで、“皆さまの暮らしに溶け込み自然体となる補聴器”に仕上げていきました。
理想はどのような聞こえでお困りの方であれ、リオネット2シリーズをつけて自然体でいられることですね。
山田
そのためには様々なお客さまの声に向き合う必要があるのですが、当社には直営店が2店舗、そして全国には約400店舗のリオネット補聴器販売店が存在します。
加えてお客さまコールセンターにも日々たくさんの声が寄せられており、常に社内で共有されています。
フィードバックされた様々なお客さまの声を分析し、製品に反映できるのが国内メーカーであるリオネットの強みですから、 リオネットエンジン2とAINRがもたらす聞こえは、まさにお客さまの声から生まれたものと言っても過言ではありません。
AIによる最先端ノイズリダクションの実現
佐藤
まずNRから説明しますと、騒音を抑制する機能のことです。
従来のNRは一定時間続くような定常音を抑制する技術ですが、AINRはそれとは根本的に異なり、「音声か、音声でない音か」を判別して音声ではない成分のみを抑制しています。
音分析は1分間で約25000回、 それも各周波数ごとに細かく処理をさせることで実現に繋げました。
わかりやすく例えますとエアコンなどの騒音はNRでも抑制できていましたが、車の行き交う騒音などはAINRの方が効果を発揮します。
山田
簡単に言っていますけど、すごい機能なんですよ。
大澤
リオンには補聴器事業以外に音響・振動計測器の事業があり、様々な場所の騒音データが活用できることもオリジナリティーのひとつです。
佐藤
AINRではDNN※1というAI技術を使い、今までのNRでは十分に抑制できなかったあらゆる雑音を抑制することを目指して開発を進めました。
私たちは膨大な音声や騒音のデータを保有し、今現在も蓄積し続けています。
そのデータをもとに、様々なパターンの雑音下音声をシミュレーションし、AINRを開発しました。
“皆さまの暮らしに溶け込み自然体となる補聴器”を実現するのは大変な取り組みだったのではないでしょうか?
佐藤
確かに大変な取り組みでした。
シミュレーションを行う端末ではAINRの持てる力を余すことなく発揮できるのですが、補聴器のサイズで実現しようとすると計算速度が追い付かなくなるのです。
そこで、高い処理速度を必用とするDNN※1を小さな補聴器へ実装できるよう努力を続けました。
また、幅広いパターンの雑音下音声の合成・シミュレーションなどを行い学習させることで、未知のデータに対しても上手くいくようにしています。
山田
私の耳にも入ってきます。
リオネットエンジン2とAINRの恩恵はもちろんですが、やはりリオネット補聴器をフィッティング(聴力をはじめ様々な聞こえでお困りの内容に合わせて調整すること)する専門員の知識と技術の賜物でしょう。
いくら良い補聴器を作っても、お客さまの聴力に音を合わせる技術が伴わなければ補聴器の真の価値が発揮できませんから。
私たち作る側の力と、実際に補聴器をフィッティングする専門員の力が融合することで成り立ちますから本当に嬉しい話です。
ハウリングキャンセラーの改良
湯野
ハウリングとは、補聴器と耳の隙間から漏れ出た音がマイクに入り、また増幅されるのが繰り返されて発生する異音(ピーピー音)のことです。
ハウリングは補聴器ユーザーにとって不快な音で、補聴器装用のモチベーションを下げる原因になります。
湯野
そうです。
ハウリングキャンセラーの主な手法として、“入力された信号に逆位相の信号を加えてハウリングを抑える方式”や”周波数をずらしてハウリングを抑える方式” があります。
前モデルのリオネットシリーズでもそれらの手法を採用していました。
しかし、どの方式も、少なからず音質の劣化や、異音の発生が確認されています。
そこで今回は、ハウリングキャンセラーの改良の手段として初期伝達関数測定を採り入れました。
湯野
初期伝達関数とは、お客さまが補聴器を装用した際に耳から漏れる音の特性(周波数データ)を指します。
この特性をお客さまごとに測定し、ハウリングキャンセラーに利用することによって、異音への耐性を向上させました。
初期伝達関数の測定は、補聴器を設定するための専用ソフトを使用し補聴器販売店にて行います。
ところで、その設定はお客さまに負担かかりませんか?
湯野
負担をかけてはならないと思っています。
方法自体は簡単ですが、お客さまをお待たせしないためにも初期伝達関数を短時間で測定する必要があります。
測定には周囲の環境音も少なからず影響しますので、賑やかな店舗や静かな店舗などを訪れてリサーチを行いました。
様々な店舗の音環境を測定するため、騒音計を1日中店内に設置し、そのデータをもとに測定音の音量を決定しています。
大澤
初期伝達関数の測定が正確にできないと、ハウリングキャンセラーの性能が低下してしまうため、リサーチは非常に重要で、 ここには特に時間をかけて行いました。
社内にいるだけでは実際の補聴器販売現場の音環境を把握できないため、現場で収集したデータをしっかりと分析し、 その上で仕様を決定できたことは非常に良かった点です。
山田
ハウリングキャンセラーもAINRも、本当に力を込めて開発しました。
ぜひ店舗に行って試聴してください!
リオネット2シリーズの音から私たちの想いが伝わればこれほどうれしいことはありません。
***
リオネット2シリーズ 製品情報
リオネット2シリーズの革新
~パナソニックとの共同開発~
これまで約80年日本人の聞こえに向き合ってきたリオネットの補聴技術と、
パナソニック株式会社の洗練されたデザインや通信技術が融合。 日本メーカー同士でタッグを組み、
それぞれが持てる力を結集した先進補聴器が誕生しました。
リオネットが長きにわたり研究を重ねてきたディープニューラルネットワーク(AI技術、以下DNN※1)を搭載し、
聞こえの向上を果たすだけではなく、今後普及が見込まれるLEAudio※2にもバージョンアップでの対応を予定。
再生周波数帯域は12,000Hzまで出力可能とし、クリアな聞こえを実現しました。
このコラムは、公開日現在の内容となります。ご覧いただいた時点の最新情報とは異なることがありますので、あらかじめご了承ください。
山田
まず、私たちが最初に考えたのは“補聴器をご使用になる方に、補聴器を使っていることを忘れるくらい自然体の毎日を過ごしてもらいたい”ことでした。
お客さまのなかには、電池切れを心配する方やさらにクリアな音を聞きたい方、雑音に影響されずに会話をしたい方など様々なニーズがあり、 私たちはこれらに向き合い応えていかねばならないと感じています。