極小の補聴器をめぐるマイスター その技術の深淵に迫る ②

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優れた空間認識能力と探究心を持つ極小補聴器のアーキテクト

モデリングマイスターのタスクは、一人ひとり異なる耳あなにフィットする極小補聴器の形状を導き出し、そこに必要な部品が収まるよう設計することである。向き合っているコンピュータのスクリーンには、耳あなと設計中の補聴器が3Dで表示され、シェル内部の部品配置に問題があると画面が赤く光る。明快な作業に見えるが、実は奥深い。
「外耳道がまっすぐであれば皆同じように小さくできるのですが、実際はそうはいきません。特に、一部が狭くなっているような形状の場合、部品の配置次第で仕上がりのサイズが大きくなってしまうことがあります。部品の角度を変えることで小さくできるのに、その点に意識が向かないんですよね。このようなモデリングの基本的なスキルは、経験というよりも持って生まれたセンスの方が大きいと感じます」
こう説明するのは日本に5人しかいないモデリングマイスターの増田孝之。耳型から瞬時に多くの情報をキャッチするプロフェッショナルだ。外耳道の太さや向き、カーブの具合からその人に合った極小補聴器の設計図を導き出す。その間わずか1台12分ほど。マイスターにはスピードも求められる。
「耳あなタイプのオーダーメイド補聴器は、装着していることをできるだけ目立たせたくないというお客さまのニーズから生まれたものなので、できるだけ小さく仕上げるのが基本方針です。しかし、実際に使用する段階では装着感や扱いやすさも大事になってきます。具体的に言うと、“装着しやすく抜けにくい補聴器”が求められます」
スーパーミニカナール極は、その小ささゆえ他の補聴器よりも引っかかりが少ない。そこでもともと補聴器が抜けやすい外耳道形状を持つ顧客の場合は、わずかにシェルの長さを足したりして保持力を強化する。逆に隙間なくハマりすぎてしまうと声がこもったり響いたりする原因になるため、少し削って空気の通る隙間を作る。耳型や注文書から顧客の特徴やニーズを読み取って加減を加えるのだという。
「スーパーミニカナール極のモデリングは小さく作ること以上に、そういった総合的な判断の難しさがあります。だからこそ面白いんですけどね」
モデリングマイスターに必要なのは天性の空間認識能力だけではない。顧客満足への飽くなき探究心も欠かすことはできない。

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耳型からどこまでイメージできるか
マイスターは届いた耳型から、耳型を採取した販売店スタッフの技量も感じ取り、実際との誤差も加味して補聴器のサイズや形状を決定する。


デジタルとリアルを調和させる
デジタルデータを操作しているときも、リアルな耳型から得た情報を統合しながら快適なフィット感を生む形状をイメージ。頭の中はフル回転だ。



           

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